自己破産と聞くと、家電や衣類などすべての財産がなくなってしまい、日々の生活もままならないと思っていませんか。実際はそのようなことはありません。たとえば、自己破産の申し立て手続きが開始されたあとに振り込まれた収入や財産は、原則として処分の対象にはなりません。それ以外にも処分しなくてもよい財産はいくつか存在します。
ここでは、自己破産すると処分されてしまう財産と処分しなくてもよい財産について、さらに生活に必要最低限のものと認められた財産である「自由財産」について詳しく解説します。
目次
自己破産した場合の財産の取り扱いは?
自己破産した場合、債務者が持っている財産は破産管財人によって処分などされそれを換価し、債権者にきちんと配当することと定められています。自己破産によって債務者は借金の返済義務を免れさらに多額の資産が手元に残るのに対して、債権者は債権回収ができなくなり損をする事態を避けるためです。
しかし、自己破産をしてもすべての財産が処分の対象になるわけではありません。法律上、破産者の経済的更生のためにある一定の財産は手元に残せるようになっています。その財産のことを「自由財産」といい、それ以外が破産財団(債務者財産)に属することになり管財人によって回収されます。
自己破産した場合に処分される財産
債権者が損を被らないように不動産や高価な自動車や多額の預貯金などの財産があった場合は、資産を現金化して債権者に平等に配当する必要があります。そのため、一定の高額な財産は破産管財人が処分・換価することとなっています。生活必需品や必要最低限のものまでは処分する必要はありません。
自己破産した場合に処分しなくてよい財産
破産者の経済的更生のために、直近の生活が困窮しないよう生活で最低限必要なものは自由財産と認められ、処分の対象にはなりません。ここでは、処分されない主な5つの財産について詳しく説明します。
新得財産
自己破産では、新得財産については継続して保有してよいと定められています。新得財産とは破産手続きをしたあとに債務者が得た財産のことで、たとえば破産手続き開始申し立て後に入った給与収入などを指します。
自由財産以外の財産は換価され債権者への配当に充てられるため、給与収入がそれに該当してしまうと債務者の生活が困窮する恐れがあります。自己破産は破産者の経済再生を目指しているので、このような事態が起きないように新得財産は残せます。
差押禁止財産
日本の法律では、いかなる場合でも差押えてはならないと定められている財産があり、これらは自己破産手続きをしてもそのまま保有できます。差押禁止財産はさまざまですが、主なものとして生活する上で欠かせない必需品である衣類、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジのような家電製品、棚やテーブルなど家具類、事業で使用するための財産などがあります。
99万円以下の現金
自己破産では99万円以下の現金を自由財産として認めており、破産財団には含まれません。そのため、自己破産をしても残せます。自己破産は債務者の経済的更生を目的としているため、現在の生活に必要となる現金は残せます。債務者が持っている現金のすべてが処分され、目下の生活が困窮してしまうことは本末転倒になるからです。
自由財産拡張が認められた財産
自由財産だけでは破産者の生活に影響が出ると思われる場合は、裁判所に申立てを行い認められれば本来決められている財産よりも多い金額を手元に残せます。その場合、破産者の生活を保証するために自由財産の範囲を広げられます。
なお、大阪地裁では、以下の財産を拡張適格財産としています。
1.預貯金・積立金(なお、預貯金のうち普通預金は、現金に準じる。)
2.保険解約返戻金
3.自動車
4.敷金・保証金返還請求権
5.退職金債権
6.電話加入権
7.申立て時において、回収済み、確定判決取得済み又は返還額及び時期について合意済みの
過払金返還請求権
破産管財人が破産財団から放棄した財産
破産手続きの中では、破産財団の処分・換価を担当する破産管財人によって破産財団の一部が放棄される場合があります。破産管財人とは、破産手続きを処理するために裁判所が選任した弁護士のことです。破産管財人は、破産者の財産調査と保有財産を処分・換価し、債権者への配当を行います。
しかし、なかにはスムーズに適正な金額に現金化できない財産もあります。手間やコストを考え、さらには破産手続きが長期化することを懸念して、処分・換価が難しい財産は、破産財団から破産管財人が放棄できるように定められています。放棄され「自由財産」となった破産財団は、再び破産者に属します。
自由財産拡張とは?
自由財産拡張とは、破産者それぞれの事情に合わせた最低限の生活を保障するために、一定の財産を自由財産とすると裁判所が決定したものを指します。すべてにおいて、自由財産の拡張が認められるわけではない点に注意しましょう。自己破産後に破産者の生活が立て直せるかどうかといった部分が重要視されるため、破産者が経済的に自立し再生するに必要不可欠であると裁判所が認めれば自由財産の拡張が行えます。その財産については破産財団に属さず破産者が自由に処分できます。
まとめ
この記事では「一定の財産は処分・換価され債権者の配当に充てられる」、「自己破産後も手元に残せる財産がある」、「処分されない5つの自由財産」について解説しました。自己破産は、借金の返済の目処が立たず困っている方の経済的更生を目的とした制度です。破産者が自立して生活できるよう経済再生を目指します。どうしても借金の目処が立たない、このままでは生活が破綻してしまうとお困りの方はまずは一度ご相談ください。